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危険な牌を予測する・7

押しながら守る ― 回し打ちと危険牌を切る判断

上級者

守りは「全部降りる」か「全部押す」かの2択ではありません。自分の手の価値、切る牌の危険度、放銃したときの失点をくらべて、押す・回す・降りるを選びます。この章では、その考え方と目安をまとめます。

比べる材料は3つ

押すか降りるかは、(1) 自分の手がアガったときにどれだけ得か、(2) 切る牌がどれくらい当たるか、(3) 当たったときに何点払うか、の3つで決まります。

放銃したときの失点は、思ったより大きいものです。ネマタは、リーチへの放銃の平均を子のリーチで約5,600点、親のリーチで約8,000点としています。一発のないロンに限ると、子約5,200点・親約7,600点というデータもあります。Mリーグの集計では、リーチでのロンアガリの平均は親10,450点・子7,099点で、さらに高くなっています。

同じ危険度なら、失点が大きい相手(親や、打点が高そうな人)ほど降り寄りになります。当たる確率と当たったときの点数は、掛け算で考えます。

  • データありリーチへのロン放銃の平均失点:子約5,600点、親約8,000点(ネマタ)。一発なしのロンに限ると子約5,200点、親約7,600点(『現代麻雀技術論』のデータ。一姫でもわかる現代麻雀技術論 第5話より)。
  • データありMリーグ2018-19〜2023-24の公式戦(カップ戦を除く1,308半荘・15,952局):親リーチのロン平均10,450点、子リーチ7,099点(Mリーグ成績速報・非公式の集計)。
  • 計算で決まる1回の打牌で放銃による損は「当たる確率×当たったときの失点」で見積もれます。危険度10%で8,000点なら、平均800点の損です。

テンパイしていれば押せる場面は多い

自分がテンパイしていると、アガる道は3つあります。リーチした人からのロン、別の人からのロン、自分のツモです。一方、放銃するのはリーチした人に当たったときだけです。しかも降りても、相手のツモや流局時のノーテン罰符で失点は残ります。この差があるので、テンパイしていれば思ったより押してよい、とネマタは説きます。

目安として、『おしえて!科学する麻雀』をもとにした整理があります。自分が先にテンパイしていればすべて押し、後からテンパイしたなら良形(両面以上の待ち)か高打点のどちらか1つで押し、後からの1シャンテンなら良形と高打点の両方が必要、というものです。

ネマタの簡易表では、子どうしなら悪形(両面より待ちが少ない形)の1翻は基本降り、悪形の2翻はどちらでもよく、それ以外は基本押しです。自分が親ならテンパイで基本押し、相手が親のリーチなら悪形の2翻以下は基本降りになります。

  • 定説テンパイなら「アガリの道が3つ、放銃の道が1つ」という差があるので、押しが有利になりやすい(ネマタ)。
  • 定説先にテンパイしたら条件なしで押し、後からのテンパイは良形か高打点の1つ、後からの1シャンテンは2つそろえば押し(『おしえて!科学する麻雀』をもとにしたネマタの整理)。
  • 目安(経験則)子どうしで悪形1翻は降り、悪形2翻はどちらでもよい、それ以外は押し。相手が親なら悪形2翻以下は降り(ネマタの簡易表。巡目や危険度の補正は省いた目安)。

回し打ち ― 安全な牌でテンパイを目指す

回し打ちは、安全寄りの牌を切りながら、アガリやテンパイの可能性を残す打ち方です。たとえば無スジを切れば受け入れが最大になる1シャンテンでも、現物を切って少し形を崩し、あとでテンパイし直したら押し返す、といった選び方です。

押すか降りるか迷う手では、完全なベタオリより回し打ちが有力になることがあります。ただしネマタは、回し打ちの前に、まずベタオリの精度を上げる方が大事だとしています。

よく使われる押し引きの表は、「降りるならベタオリ」を前提に作られています。回し打ちができる形なら、降りる側の価値は表より少し高いと考えてよい、とネマタは指摘しています。

  • 目安(経験則)回し打ちは、押し引きが微妙な手で使う打ち方です。
  • 定説回し打ちより先に、ベタオリで正しい順に切れることが大切(ネマタ)。

2軒リーチへの守り

リーチが2人になると、守り方が変わります。『新 科学する麻雀 実戦問題集』の読者まとめでは、先にリーチした人の現物でも、後から追っかけた人の無スジなら危ないとされます。追っかけリーチは両面待ちが多く、打点も高めになりやすいからです。迷ったら「2人ともにスジ」の牌を選ぶのが目安です。

ネマタも、片方に確実に通る牌を優先する考え方は古いとし、2人に対する危険度を合わせて比べるよう勧めています。片方に現物・もう片方に無スジの牌は、2人ともにスジの牌と同じくらいの危なさ、というのが目安です。

字牌は少し特別です。字牌で当たる人は、必ずその字牌を手に持っています。1人が持っていなければ、もう1人が持っている可能性が上がるので、生牌の字牌は2人に対して単純な足し算以上に危なくなる、という仮説があります。

押す条件も厳しくなります。『新 科学する麻雀』の読者まとめでは、2軒リーチの下でテンパイしたときに追っかける目安を、両面ならリーチを含めて2翻以上、愚形(両面より悪い待ち)なら4翻以上としています。Mリーグは途中流局がないので、3軒・4軒のリーチになっても局は続きます。

  • データあり2軒リーチの下での追っかけの目安:両面は2翻以上、愚形は4翻以上(リーチ込み。『新 科学する麻雀』の読者まとめより)。
  • ルールで決まるMリーグは頭ハネ(ダブロンなし)で、途中流局もありません。2人が同じ牌でロンと言っても、アガるのは放銃した人の下家、対面、上家の順で先にあたる1人です。
  • 計算で決まる2人への危険度が独立なら、2人ともに通る確率は掛け算です。それぞれ4回に1回当たる牌なら、2人とも通るのは(3/4)×(3/4)=約56%です。字牌はこの独立が成り立ちにくい点に注意します。
  • 目安(経験則)2軒リーチでは、先にリーチした人の現物でも追っかけた人の無スジになる牌より、2人ともにスジの牌を選ぶのが目安です(『新 科学する麻雀 実戦問題集』の読者まとめ)。

流局間際の押し ― 形式聴牌

役がなくても、テンパイの形になっていれば流局時にテンパイと認められます。これを形式聴牌(形式テンパイ)と呼びます。Mリーグのノーテン罰符は場に3,000点で、形式聴牌も認められます。

流局間際は、この3,000点のやりとりがあるので、危ない牌でも押した方が得な場面があります。麻雀数理研究会のシミュレーションでは、17巡目に子のリーチ1人を受け、自分は子で形式聴牌のとき、放銃率12%の生牌の役牌を押すと局収支(その局で平均して増減する点数)は+661点、降りると−745点でした。

一方で、最終盤の無スジ456は4回に1回以上当たるというデータもあります。ネマタも、テンパイ料のために危険牌を押すのが実戦では割に合わないことも珍しくない、と注意しています。2軒リーチの両方に無スジを押すような場面では、無理をしない方がよいことが多くなります。

  • ルールで決まるMリーグのノーテン罰符は場に3,000点で、形式聴牌も認められます。
  • データあり17巡目・子の1軒リーチ・自分は子で形式聴牌・ほかの2人はベタオリの条件で、放銃率12%の生牌役牌を押すと+661点、降りると−745点(麻雀数理研究会のシミュレーション。役牌での放銃は通常の1.3倍の失点と仮定)。
  • データあり最終盤の無スジ456は放銃率25%超(『「統計学」のマージャン戦術』のデータ、ネマタのレビューより)。
  • 目安(経験則)流局直前の最後の1牌を形式聴牌のために押す試算では、2軒リーチの両方に無スジを押して割に合うのは、残りの無スジが7本以上あるときくらいでした(note の記事の試算。放銃率を大まかに仮定し、ダブロンありの天鳳ルールが前提)。

点数状況で押し引きは変わる

同じ手でも、持ち点や順位で判断は変わります。『新 科学する麻雀』の読者まとめでは、トップ目は引き気味に、ラス目は打点を重視して押し気味にする傾向が示されています。ただしネマタは、点差の小さい平場ではルールの違いで押し引きは大きくは変わらないとも述べています。

Mリーグの順位点は1位+50、2位+10、3位−10、4位−30です。1位と2位の差(40ポイント)がほかの差の2倍あり、トップの価値がとても大きいルールです。ラスを強く避けるルール(天鳳の段位戦など)での研究結果は、点差がついた局面ではそのまま当てはめないようにします。

オーラスでは、全員の点数と逆転に必要な条件を毎回確かめてから、押し引きを決めます。

  • ルールで決まるMリーグの順位点は+50/+10/−10/−30(25,000点持ち・30,000点返し)です。
  • データありトップ目は引き気味、ラス目は押し気味(『新 科学する麻雀』の読者まとめ。天鳳鳳凰卓のデータをもとにした傾向)。
  • 目安(経験則)ラスの減点が重いルールで出た結論は、Mリーグでは度合いが変わる、と考えるのが目安です。

練習してみよう

参考にした資料

内容は、下の資料の考え方を自分たちの言葉でまとめたものです。くわしくは元の資料を読んでください。