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セオリー編(強くなる考え方)・7

確率と期待値で考える

上級者

強い人の判断の裏には、ざっくりした計算があります。枚数を数えて確率にし、点数を掛けて期待値にする。この2つの道具を身につけると、迷ったときの判断に筋が通ります。

まず、残り枚数を数える

確率の出発点は、自分の待ちや受け入れが「あと何枚残っているか」です。数えるのは、自分の手牌、全員の河、鳴かれた牌、ドラ表示牌など、見えている牌を除いた枚数です。

たとえば45萬の両面で3萬・6萬を待っていて、河に3萬が2枚見えていれば、残りは6枚です。同じ両面でも、見えている枚数しだいでは、嵌張より少なくなることもあります。

4萬5萬
3萬・6萬待ちの両面。何も見えていなければ8枚。河に3萬が2枚あれば、残りは6枚です。
  • 計算で決まる他に何も見えていないときの待ちの最大枚数は、両面8枚、嵌張・辺張・シャンポン4枚、単騎3枚、三面張11枚。見えている牌の分だけ減ります。
  • 目安(経験則)待ちや受け入れを比べるときは、形の名前ではなく、見えている牌を引いた残り枚数で比べるのが目安です。

引ける確率を計算する

見えていない牌が80枚あり、そのうち自分の待ちが8枚なら、次の1回のツモで引く確率は8÷80で10%です。

何回かツモるうちに1回でも引く確率は、「1回も引かない確率」を1から引いて求めます。見えていない80枚から8回ツモるとして計算すると、待ち8枚で約59%、4枚で約35%、11枚で約71%、3枚で約27%です。

待ちの枚数が2倍でも、確率は2倍になりません。4枚と8枚では約1.7倍です。そのうえ実戦では、ツモだけでなく、ほかの人からのロンもあります。嵌張リーチのアガリ率(約40%)が両面(約60%)の半分より高いのは、このためです。

  • 計算で決まる見えていない80枚から8回ツモるとき、1枚以上引く確率は、待ち8枚で約58.7%、4枚で約35.0%、11枚で約71.2%、3枚で約27.4%(見えていない牌はどれも同じ確率で来ると仮定)。
  • 計算で決まる次の1回で引く確率は「待ちの残り枚数÷見えていない枚数」。80枚中8枚なら10%、4枚なら5%です。
  • データあり9巡目の先制リーチのアガリ率は、両面で約60%、嵌張で約40%とされます(ネマタの講座)。

期待値で比べる

期待値は、起こりうる結果の点数に、その起こりやすさを掛けて足したものです。1回ごとの結果はばらつきますが、同じ判断を何百回もくり返すと、平均は期待値に近づきます。

ネマタの例で考えます。9巡目に子が先制で、リーチをかけなくても(ダマで)満貫8,000点の両面テンパイです。ダマのアガリ率を約70%とすると、0.7×8,000で5,600点。リーチすると一発や裏ドラで平均約10,800点になり、アガリ率を約60%とすると約6,480点です。相手全員が降りてアガリ率が約50%になっても、打点を約12,000点とすれば6,000点です。この条件なら、リーチがやや有利です。

ただし、この計算には、リーチで増える放銃の損などが入っていません。差が小さいときは、巡目や点数状況で結論が入れ替わります。

  • 計算で決まる期待値=(結果の点数×その確率)の合計。例: 0.7×8,000=5,600、0.6×10,800=6,480、0.5×12,000=6,000。
  • データありリーチの平均打点は、赤なしで子約6,000点・親約8,400点(『科学する麻雀』)。赤ありではその1.2倍弱で、ネマタの試算では子約7,000点・親約9,800点です。
  • データあり天鳳鳳凰卓(2023年)のリーチでのアガリ約62.7万回のうち、一発がついたのは約19%。裏ドラは1回あたり平均約0.42枚乗りました(koba::blog の集計から計算)。『「統計学」のマージャン戦術』の紹介文では、裏ドラが乗る割合を31%としています。

局収支で、1局の損得をまとめて見る

局収支は、1局の点数の出入りの平均です。アガったときの収入と流局したときの収支から、放銃したとき、相手にツモられたとき、ほかの人どうしで決着したとき(横移動)の支出を引きます。それぞれに、起こる確率を掛けて求めます。

ある書き手が、単純な仮定を置いて計算した例を見てみましょう。親の満貫リーチに対し、自分も満貫テンパイで追っかけるかどうか。危険牌が当たる確率を10%、ほかの2人は完全に降り、2人の待ちは重ならないと仮定すると、完全に降りる(ベタオリ)場合は約−2,375点、追っかけは約−1,020点でした。放銃の損は大きくても、自分のアガリの収入や、相手のツモアガリを減らす効果の方が上回ったのです。

同じ筆者は、残り枚数と打点の境目も計算しています。9巡目に子の満貫リーチ(相手の待ちは残り6枚)を受けたとき、自分の出アガリが2,600点なら残り5枚以上、8,000点なら残り3枚以上で追っかけリーチが得でした。打点が高ければ、待ちが薄くても押せるということです。

  • 計算で決まる局収支=(アガリ率×アガリ点+流局率×流局時の収支)−(放銃率×失点+被ツモ率×失点+横移動率×失点)。
  • 計算で決まる親満貫リーチに満貫テンパイで追っかける計算の内訳は、相手のツモを減らす効果+1,100、ロン放銃−3,540、自分のツモ+1,620、自分のロン+1,620、流局時+555。合計+1,355点がベタオリとの差です。
  • 計算で決まる相手が子の満貫・待ち残り6枚のとき、追っかけが得になる自分の待ちの残り枚数は、打点2,600点なら5枚以上、8,000点なら3枚以上。ダマの選択肢や途中の危険牌は計算に入っていない、と筆者が明記しています。

データを読むときの注意

局収支は1局の損得です。最終的に大事なのは、順位点を含めた半荘全体の成績です。トップ目やオーラスでは、局収支と答えがずれることがあります。

データの前提も確かめましょう。この読み物の数字の多くは、天鳳の最上位卓の牌譜(対局の記録)から来ています。天鳳にはダブロンや途中流局があり、Mリーグとは細部が違います。また、実際の対局の集計は、ある選択をした局としなかった局で状況が違う、という偏りを含みます。

数字どうしの関係にも注意が必要です。天鳳の強者の分析では、リーチの多い人はトップ率が高い一方、強者に限るとラス率も高い傾向がありました。これは「一緒に動く」という関係で、「リーチを増やせば強くなる」という意味ではありません。

  • 定説局収支が最大の選択と、順位点を含めた半荘収支が最大の選択は、トップ目やオーラスなどで一致しないことがあります。
  • データあり天鳳鳳凰卓で2000半荘以上打った1,124人では、リーチ率とトップ率の相関が0.39、リーチ率と安定段位の相関が−0.02。安定8.5段以上の65人では、リーチ率とラス率の相関が0.35でした。
  • 目安(経験則)実測データは「その選択をした人がどんな状況だったか」の偏りを含みます。1つの数字で決めつけず、複数の資料の傾向を見るのが目安です。

この読み物について

この読み物は、麻雀の戦術書、講座記事、ブログ、公開されている統計をもとに、内容を私たちの言葉で短くまとめ直したものです。元の文章や表をそのまま写したものではありません。数字は、出どころを示したうえで紹介しています。資料の一覧は、各章の終わりに載せています。

各ポイントには、どれくらい確かな話かを示すラベルをつけています。「計算で決まる」「ルールで決まる」は計算やルールから必ず言えること、「データあり」は牌譜の集計や計算(シミュレーション)の数字があること、「定説」は多くの戦術家が同じように説いている考え方、「目安」は経験にもとづく判断の基準です。

数字の多くは、天鳳など、Mリーグとルールが少し違う場で集められています。図から読み取った値には「約」をつけています。資料によって結論が違うところは、両方を示しました。

  • 計算で決まる計算で決まる: 牌の枚数や点数の計算から、必ずそうなると言えること。
  • ルールで決まるルールで決まる: Mリーグのルールなど、決まりとして定められていること。
  • データありデータあり: 牌譜の集計や、対局を模した計算の数字で裏付けがあること。出典の条件(ルール・卓・巡目)で数字は変わります。
  • 定説定説: 数字の裏付けが一部でも、多くの戦術書や強い打ち手が同じように説いている考え方。
  • 目安(経験則)目安(経験則): 経験にもとづく判断の基準。場面によって入れ替わることがあります。

練習してみよう

参考にした資料

内容は、下の資料の考え方を自分たちの言葉でまとめたものです。くわしくは元の資料を読んでください。