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セオリー編(強くなる考え方)・5

押し引き(押すか降りるか)

中級者

相手のリーチを受けたとき、危険な牌も切って攻める(押す)か、アガリをあきらめて守る(引く・降りる)か。この判断を押し引きと呼びます。目安の数字を持っておくと、迷う時間が減ります。

降りる技術が土台。でも降りてばかりでは勝てない

アガリをあきらめ、相手に当たらない牌だけを切ることをベタオリといいます。とつげき東北の『科学する麻雀』は、書評でも紹介されているとおり、上手な打ち手でも半分近くの局はベタオリすることになる、という見方を示しています。

一方で、どの局でも降りる打ち方は勝てません。学生の研究で、天鳳の成績をもとに全局ベタオリを計算で試すと、平均順位は3位台まで落ちました。

また、ベタオリしても失点はゼロになりません。相手がツモアガリしたり、流局でノーテン罰符を払ったりするからです。押すかどうかは、この「降りた場合の損」と比べて決めます。

  • データあり全局ベタオリの平均順位は約3.15〜3.6でした(相手の段位ごとの天鳳の成績を入れた模擬計算)。実際に天鳳で約30回試した結果は平均3.266位。学生の研究発表で、実戦部分の数は少ない点に注意が必要です。
  • データあり10巡目のリーチに完全にベタオリしたときの平均失点は、子が子のリーチに約−1,100点、子が親のリーチに約−1,700点、自分が親で約−1,700点(『現代麻雀技術論』の値を紹介するブログより)。安全な牌が2枚だけという条件の麻雀数理研究会の計算では、子どうしで約−1,400〜−1,500点です。前提によって数百点変わります。

テンパイなら、思ったより押せる

リーチに対してテンパイで押すと、自分がアガる道は、リーチした人からのロン、ほかの人からのロン、ツモの3つがあります。放銃するのは、リーチした人に当たったときだけです。この差があるので、テンパイしていれば思ったより押してよい、というのがネマタの基本線です。

昔は「先手・良形・高打点のうち2つそろえば押せ」という格言がありました。先手とは、相手より先にテンパイやリーチをしていることです。『おしえて!科学する麻雀』の整理では、この格言は先手の価値を低く、高打点の価値を高く見すぎていました。

新しい整理はこうです。自分が先にテンパイしたなら、安くても愚形(嵌張などの狭い待ち)でも押す。相手のリーチの後にテンパイしたなら、良形(両面以上の待ち)か高打点のどちらか1つで押す。相手のリーチの後で、まだ1シャンテンなら、良形と高打点の両方が必要です。

2萬3萬4萬5筒6筒7筒2索2索4索5索6萬7萬8萬
相手のリーチの後に入った両面テンパイ(3索・6索待ち)。タンヤオ・平和つきの良形なので、子どうしなら押す側の目安です。
  • 定説テンパイで押すと、アガリの道は3つ、放銃の道は1つ。良形テンパイなら、ほぼすべて押してよいとされます(ネマタ)。
  • 定説先にテンパイ=条件なしで押す。後からテンパイ=良形か高打点の1つで押す。後から1シャンテン=2つとも必要(『おしえて!科学する麻雀』の整理をネマタが紹介)。

リーチを受けたときの早見表

ネマタは、自分がテンパイしているときの簡単な目安を示しています。相手も自分も子なら、愚形1翻は基本降り、愚形2翻はどちらでもよく、それ以外は基本押しです。

自分が親なら、テンパイしていれば基本押しです。相手が親のリーチなら、愚形2翻以下は基本降り、それ以外は基本押しです。親の点数は子の1.5倍なので、親への放銃はそれだけ痛くなります。

相手のリーチの後にかけるリーチを、追っかけリーチといいます。『新 科学する麻雀』を読者がまとめた記録では、相手1人のリーチに対して、両面ならいつでも追っかけ、愚形はリーチ込み2翻以上、極端な悪待ちはリーチ込み3翻以上が目安です。

1シャンテンのときは基本降りです。旧版の『科学する麻雀』では、7,700点以上が見込めない1シャンテンは降り、とされました。『新 科学する麻雀』の読者のまとめでは、メンゼン1シャンテンで押す目安は「良形が確定していてリーチ込み3翻」(中盤・子どうし)です。2シャンテン以下なら、ほぼ降りが正解です。

  • 目安(経験則)子どうしのリーチ: 愚形1翻は降り、愚形2翻はどちらでもよい、それ以外は押し。自分が親ならテンパイで押し。相手が親なら愚形2翻以下は降り。ネマタの簡易表で、細かい補正は省いた目安です。
  • データあり相手1人のリーチへの追っかけの目安は、両面なら常にリーチ、愚形はリーチ込み2翻以上、極端な悪待ちはリーチ込み3翻以上。「両面1翻 ≒ 愚形2翻 ≒ 悪待ち3翻」(いずれもリーチ込み)という換算もあります(『新 科学する麻雀』の読者のまとめ)。
  • データあり1シャンテンから押す目安は、旧版『科学する麻雀』で7,700点以上の見込み(書評による紹介)、『新 科学する麻雀』で良形確定のリーチ込み3翻(中盤・子どうし。読者のまとめ)です。巡目が深いほど1シャンテンのアガリ率は下がり、条件は厳しくなります。

放銃の痛さと、切る牌の危険度

押し引きでは、放銃したときに失う点数も考えます。ネマタによると、リーチに放銃したときの平均失点は、子のリーチで約5,600点、親のリーチで約8,000点です。

Mリーグの非公式の集計でも、親のリーチのロンアガリは平均10,450点、子のリーチは7,099点でした。子のリーチでも、ロンアガリの約半分が満貫以上です。

もう1つの材料は、切る牌がどれくらい当たりやすいかです。『科学する麻雀』の危険度の数字では、スジの2・8は約5%、無スジ(リーチした人の河にスジの牌が出ていない牌)の2・8は約7%でした。両側のスジがどちらも出ていない4・5・6はもっと危なく、約12%です。危険度の見分け方は「危険な牌を予測する」の章でくわしく扱います。

  • データありリーチへのロン放銃の平均失点は、子のリーチで約5,600点、親のリーチで約8,000点です(ネマタ)。
  • データありMリーグ(2018-19〜2023-24の公式戦・カップ戦を除く1,308半荘・15,952局)の非公式集計では、親リーチのロン平均10,450点、子リーチのロン平均7,099点、子リーチのロンアガリのうち満貫以上が48%です。
  • データあり『科学する麻雀』の危険度の数字(学生の研究資料に引用されたもの)では、リーチへの放銃率は、単騎待ち以外の字牌3.4%、スジの2・8が4.8%、無スジの2・8が7%、両側とも無スジの4・5・6が12.3%です。

2人にリーチされたら、条件はぐっと厳しく

リーチが2人になると、放銃する相手が2人に増えます。『新 科学する麻雀』の読者のまとめでは、2人のリーチを受けてテンパイしたときに追っかけリーチする目安は、両面ならリーチ込み2翻以上、愚形なら4翻以上です。

降り方も変わります。片方に確実に通る牌だけにこだわるより、2人それぞれへの危険度を合わせて小さい牌を選ぶ方がよい、とネマタは述べています。なお、自分が降りている間に2人がリーチした場合、リーチした人どうしで決着すること(横移動)も4割ほどあります。

完全に降りるか押すか迷う手では、回し打ちという選択もあります。安全な牌を切りながら、テンパイやアガリの可能性を残す打ち方です。ただしネマタは、まずベタオリの精度を上げる方が大事だとしています。

  • データあり2人リーチの下でテンパイしたときの追っかけの目安は、両面2翻以上、愚形4翻以上(リーチ込み)です(『新 科学する麻雀』の読者のまとめ)。
  • データあり2人がリーチしたときに、リーチした人どうしで決着する横移動は約43%です(『「統計学」のマージャン戦術』の書籍紹介文による)。
  • 定説回し打ちは有力な選択肢ですが、まずはベタオリの精度を上げるのが先、というのがネマタの考えです。よく使われる押し引きの表は「降りるならベタオリ」を前提にしているので、回し打ちができる場面では降りの価値が少し上がります。

練習してみよう

参考にした資料

内容は、下の資料の考え方を自分たちの言葉でまとめたものです。くわしくは元の資料を読んでください。